The Tarot of Marseille and the French Tradition
マルセイユ版」とひとことで言っても
様々なタイプが存在することがお分かりいただけたでしょうか。
その1では、それぞれの絵柄的な特徴を少し語らせていただきました。

様々なタイプのマルセイユ版の違いとは? 
制作者、制作年代、発祥地の三点がそれぞれ異なります。このデッキ情報をもとに、
現在流通しているマルセイユ版デッキ5点を追求して参ります。


2006/12/9のウェイト版とマルセイユ版比較研究会の後記を兼ね、またステラ・マリス・ナディア・オフィス刊「タロットカタログ」の内容を編集してお伝えしてゆきます。ちなみに、ウェイト版とマルセイユ版比較研究会は2006年の忘年会を兼ねた昼食会も併設されており、講座の充実度がやや散漫になってしまったため、参加者のみなさまにはここでゆっくり整理していただきたく、お願い申し上げます。
順不同、年代に関係なく紹介しております。
 ジーン・ノブレのマルセイユ版/Tarot de Jean Noblet
 ジーン・ノブレ(Jean Noblet)による、1650年頃の作品。ノブレは、パリの名高い伝統職人、彫刻家でした。彼の多くの弟子から優秀なカード職人が排出されました。

デッキ情報
・制作者:ジーン・ノブレ(Jean Noblet)
・制作年代:1650年
・発祥地:フランス/パリ

その1でも紹介しましたように、フランスのマルセイユ版サイトによれば、このデッキの特徴として、それまで通常タイトル無記名で、単に「死に神・デス」(Death)と呼ばれているアルカナであった札に「XIII」を特定していることであると上げられています。

ジーン・ノブレのタロット復刻版におきましては、ビビッドな配色が特徴的
ノブレの時代には、まだ、伝統的な知識は、マスター・エングレーバー(彫師の親方)から、その弟子へと伝えられるものであった。彼は、彼の後に従う誰よりも、知識の源に近かった。彼が、誰よりも影響力を持つのは、このためである。
専門家や、ディテールを楽しむ人なら、じっくりと検討する価値のある特徴を、いくつも発見できるだろう。

ノブレのタロットでは、象徴的な7色が使われている。この色の一部については、昔から伝わるフレーズ(成句)の中で、定義付けされている。これは、Compagnons du Devoir(職人組合)で、今でも歌われているものだ。
白、ジャック親方の涙
黒、彼を生んだ大地
赤、彼が流した血
青、彼が受けた打撃
黄、忍耐
緑、希望

他に2色が、これに加わる。明るい青(他の古いタロットでは、灰色になっている)と肌色である。
イメージ・メーカーが、その絵に色を付ける時、頭にあったのが、この謎めいたフレーズである。彼らは、神聖なもののために尽くしており、そのことを知っていた。
彼らは、効果的であることにしか関心が無かった。意識下のメッセージだけが、問題だったのである。線描は、知性に語りかける。それに対し、これらの図像の色彩は、相互の関係における、その大きさと位置によって、我々の無意識に語りかけるのだ。
(ステラ・マリス・ナディア・オフィス刊 ノブレのタロット日本語解説書より)


それでは、左記、アルカナ「世界」に描かれている人物の右足の示すところは何なのでしょう?
「太陽」の人達はもっと複雑そうです。
「戦車」の馬車に描かれているイニシャルについて、ジーン・ノブレの作画であれば、イニシャルは「J.N.」になるはずです。
ここに見られる「I.N.」とは?
現在、ノブレのタロット復刻版の版権を持つRoxanne Flornoy 氏にお尋ねしたところ、
下記のようなお返事をいただきました。

I.N.はジーン・ノブレのイニシャルです。その時にJを使用しなかったのでしょう。
戦車の前方の盾の部分には、彫刻家、即ちタロットの作者の頭文字が含まれます。エディター即ち、制会社の編集者に当たる者が、コインの2つあるいはカップのうちの2つの上で示されます。ノブレは彫刻家とエディターの両方を兼任していました。1701年以降、ひとりの作者が制作を兼ねることはあり得なくなりました。ドーダルのタロットの「戦車」においては、頭文字はなく、彫刻師については、何も知り得ることできません。


なるほど、、作者と制作会社の一体作業であるというのが当たり前かのような現在のタロットですが、当初は自作自費出版だったのですね。で、どうしてJ.N.のはずが、I.N.なのかが今ひとつ深く分かりかねるのでした。
 ジャック・ヴィーブルTarot of Jacques Vieville
ヴィーブルのタロット。タイトル無記名のところが古典版の象徴。サイズが縦横12×6cmと、実際の手の大きさに合わせて拡大され、なおかつ二対一の比率が採用されています。より実用的なタイプを生み出したかったのでしょうか。ノブレのタロット同様、背景の柄は、マルタ十字が敷き詰められているのですが、絵柄はノブレのタロットを踏襲したものではありません。作者はどうしたことか、印刷の段階でミスが発生したのでしょうか、ご覧の通り「吊された男」の天地が逆に。。
デッキ情報
・制作者: ジャック・ヴィーブル(Jacques Vieville)
・制作年代:1650年
・発祥地:フランス/パリ
戦車 正義 吊された男
上図、アルカナ「塔」でございます。忘年会の際に「星」だと言ってしまってごめんなさい。えらくお怒りを買ってしまいましたね!いやしかし、主催者も準備から何から大変で混乱したりもしますよ。
太陽 世界
ミスプリントだなんて、このデッキにタロットとしての価値はないの?と思いきや、、いやいやそんなに無価値なものなら誰が販売するでしょう?このデッキは、秘教的シンボリズムが導入されて作成されたもの故、当時は一定の評価を得たものです。ただ、作者がある秘教的な組織の団員なのか、その分野に精通している人物であるかであって、タロット専門家ではなかったということなのでしょう。

天馬の童子的「太陽」
の原典はこれに!かのウェイト博士はこちらの太陽がお好みだったようで。
天からマナ(※)が降ってくる的「塔」も必見。
吊された男のミスプリントヴァージョンもユニークですし、コレクションにはぜひお勧めの一品。


マナとは?
ノブレ、ヴィーブルという代表的なデッキの他にも似たようなデッキを独自の色彩、絵柄で作成した彫刻家がおりましたが、たとえば、ジーン・ドーダル(Jean Dodal)氏のタロットなどが、1701年に出ておりますが、どうも「戦車」のシールドに記載されているべき制作者のイニシアルがないなど、批判が少々聞こえております。




さて、ここで少しフランスの地理を復習しておきましょう。首都パリと言えば中央北部、対して南部も南端、地中海に面したマルセイユまでほぼ縦断する形となります。即ち、下記、ニコラス・コンバーのマルセイユ版が誕生するまでには、フランス全域に木版画タロットは出回っていたということが考えらえるわけです。
  エンシェント・タロット・オヴ・マルセイユ/Ancient Tarots of Marseilles
さて数々の創作タロットを経て、登場しましたのが、ニコラス・コンバー(Nicolas Conver)氏による改訂ヴァージョン。
ノブレ・タロットがパリ、ヴィーブルがリヨンにおいて発祥しており、地図を見ていただけるとおわかりでしょう、ちょっと距離が広がりますね。「マルセイユ版」という通称は、このデッキあたりから、人々の間に定着したのでしょう。時代と共にリクリエイトされヴァージョンアップしつつ、ノブレのタロットに近い色調、青黄緑色のトーンを受け継いでいるものです。業界で一定の評価を得ており、このデッキは絶賛された模様。「古いタイプのマルセイユ版(Ancien Tarot de Marseille)」として、1930年にグリモー社(Grimaud)から発売され、ポール・マルトー(Paul Marteau,)がこれを絶賛し出版した書籍「Tarot de Marseille」をきっかけに、世界中に広がり愛好されるに至ります。
デッキ情報
・制作者: ニコラス・コンバー(Nicolas Conver)
・制作年代:1760年
・発祥地:フランス/マルセイユ
皇帝 吊された男
左図、アルカナ「世界」の踊る天女的な両性具有神の足は、ナチュラルにステップを踏むかような光景に見えます。

太陽 世界
この画像は、ロスカラベオ社(LoScarabeo)製「Ancien Tarot de Marseilles」
一字違いなんですけれどもね。。グリモー社製のと。
また、ヘロン社(HERON)からも「Tarot de Marseille」というタイトルで出ています。ページの最後尾に紹介しています。
すべて微妙にサイズと言い、紙質と言い、色調と言い違っており、タロットマスターとしては、この微妙な差異を見つめることだけで、この上なく楽しい時を過ごせるのですよね。
 カモワン・タロット/Camoin Tarot de Marseille
ニコラス・コンバー氏のデッキをさらに精製したものが、カモワン・タロットです。もう皆様の中にもお馴染みの方が多いでしょう。本当に身近でも人気のあるカモワンです。あまり一般的な占いには向いていないというお声が聞かれたりもしますが、このデッキだと当たるとか的中率の高さを誇る人も多々。結局デッキも相性なのでしょうね。

デッキ情報
・制作者: フィリップ・カモワンその他(Philippe Camoin&Alexandre Jodorowsky)
・制作年代:1998年
・発祥地:フランス/マルセイユ
こちらのデッキでは、アルカナ「皇帝」「吊された男」「世界」に描かれている人物及び神様の足の組み方を、ある種の象意に決定的に結びつけました。黒々とした輪郭のハッキリした線が、ビビッドなイエローを特に引き立てます。
皇帝 吊された男
上図アルカナ「塔」につきまして、有名な、天からマナが降ってくる。。という解説を聞いたことがある方もいるでしょう。ね、この原典は、ヴィーブルのタロットである可能性が!

世界
  マルセイユタロット/Tarots de Marseille
さて、ブルー&イエローの配色が目立つマルセイユ版のようですが、ブルー&レッドが目立つ色調になっているのがこちらです。同じヘロン社から出ているヴィーブルもこちらのタイプと言えるでしょう。人それぞれ色彩、色調の好みというものがございまして、とりわけタロットにおいて、絵柄に使われている色は重要。人体に与える視覚的、色彩的な影響の大きさとは言わずと知れたところですので、目で見て心地良いデッキを、どうぞお選び下さいね。輪郭の線もやわらかいですし、女性の方には、特にこちらお勧めしております。
デッキ情報
・制作者: ニコラス・コンバー(Nicolas Conver)
・制作年代:1760年
・発祥地:フランス/マルセイユ
イコン、宗教画でおなじみの青、赤の対比が、見る者の心をなごませるのでしょうか。
左図アルカナ「戦車」に、V.T.のイニシアルが。どちらの会社から出ていようとも、すべてのニコラス・コンバー版の戦車に同じイニシャルがございます。よって、このデッキはタロットコレクターとしてあなたがお手にする価値は十分ございますのでご安心下さい。

いかがでしたでしょうか?ここで紹介されているデッキは、「タロットマスターズワールド」のタロットを買うコーナーからからすべてお買い求めいただけます!お気軽にご用命下さい。
マルセイユ版研究 その1へ
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