タロット研究室
ウェイト版  第二回    
「The Pictorial Key to the Tarot」とアーサー・エドワード・ウェイト博士についてのページです。



22枚の大アルカナに56枚の小アルカナを合わせた78枚をワンセットとするタロットですが、もともと正確な枚数で順序だった配列が決められていたわけではありません。最古と言われるヴィスコンティ版などには、各札にタイトルも番号も振られていません。キャリー・イエール・パックにおきましては、22枚の大アルカナと64枚の小アルカナの86枚で一組となっており、現在ではスタンダードとされている一連の78枚のアルカナには見られない絵柄、タイトルの札が存在しています。1900年代に入って、ヴィスコンティ版の復刻版が出版される際に、既に巷に出回りポピュラーになっていた一連のタロットカードに倣って後付けされたタイトルと配列なのです。(※復刻版の刊行は、ベルガモ・パックが1975年、キャリー・イエール・パックが1984年)

 現在、スタンダードだと言われている配列にも、「愚者」の位置、数字の8のが振り当てられているものが「力」であるか「正義」であるかなどデッキによって、またさらに違いが発生します。22枚の札を順序立てて解説してゆく際に、取り上げるデッキがどういうタイプのものかによりバリエーションが広がることになります。

 通常、「力」「STRENGTH」「FORTITUDE」「FORCE」などでお馴染みのアルカナがございます。ヴィスコンティ版キャリー・イエール・パックでは、「力」には11が振られており、獅子とその背に腰を下ろす長い金髪が美しい女性が描かれています。女性が、大きく開いた獅子の口に手を当てている様は、戯れているかのようにも見えます。一方、ベルガモ・パックでは、鎧姿の勇ましい男性が棍棒を振り上げる様とその足下に前足をつき体勢を低くした獅子が描かれています。一見、獅子を棒で打ち負かしているようにも見えますが、よく見ると男性の顔と獅子の顔がうり二つなのです。英文の解説書によれば、男性と動物が共通の敵に対して戦闘体制でいる様子で表現されていると表記されている一方、男性がこん棒を振る下でライオンが縮こまっている様子だと言う解釈もあると付け加えられており、作画家の真意は解明されていない模様。

 古典的と言われるマルセイユ版では、剛力女がライオンの口をこじ開けているような厳つい風貌をしています。女性が大きなつば広の帽子を被っており、そのつばの形が数字の8の形、或いはインフィニティ(無限大)の記号をしているタイプもありますが、近年になって採用された独創的な構図で、むしろウェイト博士の「力」の影響を受けて出来た新作タロットだと言えるでしょう。

 筋骨たくましい女性が「女力士」などと名付けられているヴァージョンが多く見られますが、獅子と格闘する旧約聖書の英雄サムソン、または、ギリシア神話に登場する獅子を倒したヘラクレスを思い起こさせるような絵柄の「力」も存在します。

 さて、時代を遡るほど、この「力」が十一番目に配列され、八番目には「正義」が来ているデッキが主流になるようです。そもそも、古くから伝えられるタロットカードの配列において、この
第八のアルカナと第十一のアルカナの変換を行ったのが、ウェイト博士であると言われています。博士は、78枚のアルカナを、ユダヤ神秘思想「カバラ」の教義を図説・体系化した「生命の樹」の各セフィロトとパスに対応させて、他ならぬこの「ウェイト版」を編み出したのです。ここに札を変換した理由があるのです。

 カバラの信徒、修行者即ち、カバリストが目指すことは神的存在である光との合一。頭上の遙か彼方、セフィロト・ケテルのさらに上空、天空を越えたところに輝く無限の光が稲妻の如く人体に降りてくる一方で、人が無限の光に到達するには蛇が樹を這うように全ての小径を蛇行し伝わって行く・・・この光の上昇と下降する道筋が、生命の樹の小径が示すところになります。ウェイト博士は、天頂からまず第一段階に下ってくる最初の小径に「愚者」、次の小径に「魔術師」・・・最後の地上に至るところの小径に「世界」を配当させたました。結果、各アルカナの絵柄・象意と光の諸力の織りなす照応図を、カバラの教義に則った上なるものと下なるものとの象徴的宇宙観をかもし出すことに成功したのです。ただし、ある一点において操作が必要でした。

生命の樹のセフィラー・ケセド「木星の諸力」からセフィラー・ゲブラー「火星の諸力」をつなぐ小径、それは、右の柱から左の柱へと樹全体の中央に近い箇所を一直線に横切っています。この小径の中央を十字に横切るように、天頂のセフィラー・ケテルから中央のセフィラー・ティファレトに真っ直ぐ降りてくる小径は「女教皇」即ち「月の諸力」を有するものであり、また、そこから最下位のセフィラー・マルクトに降りてゆく小径をその延長として捕らえると、ケセドとゲブラーを結ぶ小径は生命の樹の中心部でクロスを形成するという非常に重要な箇所であるわけです。このように、左右の柱の橋渡しをし、縦一本の中央の樹とクロスを形成している小径には、第四の小径「女帝」即ち「金星の諸力」と、第十七の小径「塔」即ち「火星の諸力」が作用する箇所とがあり、第九の小径はこの2つの小径の中央に位置しているのです。
古典的なデッキでは、8の数字が振り当てられている「正義」がこの位置を担当することになりますが、ウェイト博士はこの小径に「金星の諸力」が作用することにまったく納得がいかなかったのです。惑星と相対物の観念からは「太陽」「木星」などが配置されるのがベストでしょう。
ウェイト博士による、生命の樹と大アルカナの対応をとくとご覧下さい!


※ヘブライ文字22文字の中で、simple letterと言われる部類の12文字を取り上げて、これと生命の樹の各パスとは対応する関係にあります。
その12箇所に、大アルカナを対応させる作業をウェイト博士は行いました。


大アルカナ22枚とヘブライ文字の対応についてここで見てみましょう。
三種のヘブライ文字 maternal、double、simpleという種別による考察
maternalletter と三要素
愚者 空
吊された男 水
審判 火



double letter と七惑星
魔術師 水星
女教皇  月
女帝   金星
運命の輪 木星
塔 火星
太陽 太陽
世界 土星


※2 simple letter と12宮との対応
ウェイト博士の変換返還前の古い配列
白羊宮〜双魚宮へ、
一見きれいに対応しそうなのですが、
水色の部分=問題が発生します。
アルカナ 対応12宮
皇帝    白羊宮
法王    金牛宮
恋人たち 双児宮
戦車 巨蟹宮
正義 天秤宮
隠者 処女宮
獅子宮
死に神 天蠍宮
節制 人馬宮
悪魔    磨羯宮
星     宝瓶宮
月     双魚宮


ウェイト博士が行った変換後、ウェイト博士独自の配列
12宮がきれいにそろいます。
アルカナ 対応12宮
皇帝    白羊宮
法王    金牛宮
恋人たち 双児宮
戦車 巨蟹宮
獅子宮 (太陽)
隠者 処女宮
正義 天秤宮 (金星)
死に神 天蠍宮
節制 人馬宮
悪魔    磨羯宮
星     宝瓶宮
月     双魚宮


 皇帝以降、順当に、12宮を配列してゆくと、第七のアルカナ・戦車―巨蟹宮 までは合致するが、第八のアルカナ・正義には、風象サインの天秤宮が相当することになり、ここで白羊宮からの順当な配列が崩れてしまうのです。しかし、第九のアルカナ・隠者には処女宮が相当し、以降、死に神と天蠍宮、悪魔と磨羯宮、星と宝瓶宮、月と双魚宮は、のsimple letter と12宮 ウェイト博士の変換によれば、確かに8の正義、11の力を入れ替えることで、照応表を完成させることが可能になり、生命の樹との対応についても合致させることができるようになったのです。

 一般的なカードの配列に、何らかの作者の独創が施すというのは、これまでも数々のオリジナルタロットが創作されるにあたってなされてきました。20世紀最大の魔術師アレイスター・クロウリーの「TOHTH トート」では、「皇帝」と「星」入れ替えが行われていることなどはご存知の方も多いでしょう。それは決して問題ではなく、作者の意図、真意を理解し、私たちがどう受け入れるかが問題なのです。このように手を加えられた独創タロットに価値を見出さない人達も少なくなく、ウェイト版を根強くこれを否定し異論を唱える人達も存在します。各人がどういうものを「タロット」だと定義しているかにより、色々な考え方、趣向が発生します。そもそもタロットと言うものが、いつどこでどういう発祥の仕方をし、それがどういう経緯で現在の「スタンダード」に至っているのかと言う認識が、人によって違う場合があるのが現状である中、どの説がが正しいか間違っているかを論じることはナンセンスです。

 ウェイト博士は、大アルカナ22枚それぞれを、ヘブライ文字に相当させたエリフェス・レヴィ、そして、パピュ博士の影響を受けていることは明白です。一方で、これまでの番号なしの「愚者 THE FOOL」にゼロという数字を振り当て、そこから、カバラの生命の樹の第一のパスを対応させたことで、レヴィやパピュとの対応と異なる結果を導き出しました。

 そう、ウェイト博士は過去の偉人の功績をそのまま踏襲したわけではないのです。アルカナと文字との対応においては、レヴィやパピュが、最初の文字・アレフに「魔術師」を相当させ、番号なしの「愚者」を21番目に来るように配置しました。これは、20番目の「審判」即ち蘇りの儀式を経て、人が天界の楽園に神として生まれ変わる22番目ラストカードである「世界」の結果の間に置くという「エジプト死者の書」に見られるエジプト人たちの死後の世界観になぞってタロットを解釈したことによります。死後、魂の裁量の儀式を通過できなかった民、つまり天界に上がることを許されず生まれ変わりを果たせなかった民は、また振り出しに戻って無から出発すること、エジプトの平民として地上における生を復習しなければならないことがここでは語られているのです。それに対して、ウェイト博士は、最初のヘブライ文字・アレフに「愚者」を対応させました。愚者が番号なしであれゼロであれ、生命の樹との対応においては、1の「魔術師」の前に配置することがナチュラルであるというのが、ウェイト博士の考え方のようです。

 レヴィもパピュもウェイトも、魔術研究家としては誰もが認める指折りのオカルティスト、大家であります。発祥からもともと謎に包まれているタロットについて、どの研究家の提唱もあくまでも提唱であり、ここに正誤の問題は発生しません。どの説もが、ひとつタロットの謎を解くカギとして必見に値するでしょう。ウェイト博士が、確かに広く世の人々の心を掴むオリジナルデッキを創出したと言うことは客観的事実に他なりません。



2006/06更新

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会員専用ページにウェイト版原書の和訳連載中
ウェイト版原書
「THE PICTORIAL KEY TO THE TAROT」
By Arthur Edward Waite
Illustrations By Pamela Colman Smith.
[1911]
和訳バージョン掲載中

参考URL
http://www.sacred-texts.com/tarot/pkt/

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