タロット研究室
ウェイト版  第3回
「The Pictorial Key to the Tarot」とアーサー・エドワード・ウェイト博士についてのページです。


 

タロットの展開法として知られている「ケルト十字展開法」について考えていきたいと思います。展開図はこちらで確認
 本サイトでダウンロードできる展開法は、後尾にある主なケルト十字展開法の、伝統的・クラシックなタイプと、ウェイト博士に代表されるオカルティストが提唱している形とを融合させてタイプで、現代占術家によりアレンジされたタイプと言えるでしょう。

 ケルト地方、ケルト民族

 さて、これらが何故「ケルト十字展開法:Celtic Cross Spread」と呼ばれるのかということから説明する必要があるでしょうが、これについて、詳しい文献が存在しているわけではありません。ですので、この1頁で本題がすっきり解決するとはなかなかいかないでしょうが、まずは、ケルトという地名、民族名から整理してまいりましょう。1846年、オーストリア北部のハシュタットという町から発掘された遺跡をきっかけに、次々に高度な水準を伺わせる人々の生活品、装飾品が発見され、ハシュタット鉄器文明が重要な鍵とされています。装飾品には、「ケルト模様」と言われる二つの渦巻きや三脚どもえが見られるとのこと。これらを考古学者たちは、B.C.1300〜600年の間にドナウ川からやってきて定住したケルト人たちの文化であると推定しています。

 しかし、ケルト民族については、古代史において未だに謎に包まれている分類に属し、始源地についてなども諸説あるのが現状。わかっていることは、ケルト民族という単一民族が存在していたわけではなく、多数の部族から成り立っており、共通した言語(ケルト語)、宗教、文化を持っていたが、政治形態にはうとく、一箇所に定住することはなかったということ。長い時間をかけ移動し、他民族との攻防の末、B.C.一世紀にはローマ人に滅ばされたということ。民族の発祥や史実については、インターネット百科事典wikipedeaなどでも確認してみて下さい。

 さて、「ケルト十字:Celtic Cross」 即ち、ケルト人の十字 と呼ばれるからには、彼らの信仰に関わるものだということは、ある程度、宗教、占術、神秘・オカルト的な分野一般にたしなみのある方なら、容易に推察できることでしょう。



左が、ケルト十字の像。アイルランド地方のアイオナで多く見られる他、コーンウォールウェールズ、スコットランド国境あたりでも確認されています。7世紀頃に盛んに作られたものだと推定される。

偶像崇拝の対象としてか、儀式の道具としてでもあったのか、彼らはギリシア十字に近い十字の交差部分に円を重ね合わせるという形で彫像を作成し奉ったのです。


英語の古い読み方では、「クロス;cross」は 拷問の道具「ルード;rood 柱」と同義語とされていました。その時代において、「柱」は「棒」とも同義語でした。棒と言えばタロットのスートに、ワンド/WANDがありますね。

ケルト社会を牛耳ったドゥルイド
 
ケルトの王と並んで有力だったのは、ドゥルイド=神官、聖者です。「オークの樹の賢者」という意味で、おそらく樫の木で作ったワンドが彼らのサインだったのでしょう。ハーブ療法などをほどこす医師としても活躍し、争いが起これば裁判官をも担ったと言われます。時代と共に彼らが、立法者、政治、吟遊詩人へと役割を分担するようになっていったと言われますから、ローマに吸収されちりぢりになっていったケルト人の古い宇宙観や伝承が、現在のヨーロッパのいたるところに某かの形で息づいていると言っても過言ではないわけですね。ギリシア・ローマの文化に対して、マイノリティと言ったところでしょうか。
  ドゥルイドの信仰は、太陽崇拝と肉体は滅びても魂は永遠だとする霊魂不滅の思想に代表されます。太陽や星など天体の軌道、四季の円環を崇拝し、人間もまたこの軌道に準じる存在であったと信じたのです。「ケルト十字」は、その教義その物を体系化し、奉られたものだと考えられます。カバラにおける、カバリスト達の教義の体系化が「生命の樹」である如く。

  アイルランドでは、ケルト十字は、キリスト教において、異教徒を改宗させるためのものであり、聖パトリックによって導入されたという通説も存在します。聖パトリックは、キリスト教(クロス)のシンボルを、太陽の諸力を暗示する太陽円と結びつけることによって、キリスト教に反発する異端信奉者に、十字の脅威的なイメージを植え付けようとしたと考えられています。
  このようにキリスト教が広まる前には、ケルト民族土着の信仰というものがあり、太陽神、農作物の神、妖精にまで及ぶものでしたが、それらはすべてドゥルイドの教義に根ざすものだったのです。ケルト地方には特有の多くの神話が存在しますが、ケルト人たちは独自の天地創造神話を持たなかったことで知られています。宇宙が、天や地や水がどのように生成されたのかということよりも、既に存在するその大いなる自然その物を畏怖し、崇拝した、自然崇拝の民族であったのでした。彼らは、空が落ちてくること、大地や海に飲み込まれることを恐れていたのです。
  
  とは言え、ケルト人たちより以前の青銅器時代にも既に、「太陽十字;Sun Cross」なる同様のシンボルが発見されているとのこと。エジプトのアンク十字の流れを汲んだものかとも考えられます。
  

 円と十字

 円と十字の象徴については、タロットをお使いの方には馴染みがあるものでしょう。既に、キリスト教以前に発祥したものであることは各シンボル辞典でも確認いただけるでしょう。大アルカナでは、「法王」の三重十字、「吊された男」の足の形や、描かれているタウ十字、「運命の輪」「世界」で触れる円など、そこここで解説もなされておりますね。
 十字は、「東西南北」という四方向を表すシンボルであったという説が有力です。おそらく、儀式やまじないに使用されていただろうと考えられています。円は、完全性、不滅、一体化、一なる者、神的存在を表し示すと言われてきたものであり、この二つの合体が「宇宙」その物を象徴しているものであることは、ご理解いただけるでしょう。円の中に十字を描き、魔法陣として使用したり、護符、お守りも作られるようになります。今日ではペンタグラム(五芒星)を書き込んだ
護符ペンタクル/Pentacleが人気があるようですね。

 さて、ここで、タロットのアルカナの各象徴の基本概念に関係する「中世社会」についても、触れなければなりません。「円卓の騎士」で知られるアーサー王伝説とは中世ヨーロッパにおける代表的な文学ですが、おそらく起源はケルト人の神話と考えられます。「アーサー王伝説」は固有のタイトルですが、類似した話が多数存在し、それらをまとめて「聖杯伝説」とも申します。聖杯と言えば、タロットのスート、
カップ/CUP。聖杯伝説につきものなのが、エクスカリバー。聖剣、即ちタロットのスート、ソード/SWORDですね。
 アーサー王伝説中では、杖をふるって魔術的な力を発揮する賢者マーリンの存在が際立っていますが、これが即ちケルトのドゥルイドをキャラクター化した存在なのでしょう。ヨーロッパの封建社会において、「騎士」は人気を博しましたが、それは彼らの「騎士道」故。日本で言えば赤穂濾士のようなものでしょうか。中世騎士道とは、「君主に対する忠誠心はもとより、女性や子供に優しく、敵に対して礼節を持って接すること」。大アルカナ「死に神」のデス・エンジェルが、何故騎士の甲冑を身につけているのか..?一考の余地があると考えられます。

 
さて、ケルト十字展開法とは、大いなる宇宙における自分自身の存在位置を確認し、太陽と共に暁を目指し宇宙の流れと共に一体化するための展開法であることが、おわかりいただけたでしょうか。一個人の「潜在意識」を詮索するための道具ではないし、単に「未来がどうなるか」という当てモノ占いをするための道具でもないのです。 タロットの解釈においては、一筋縄でいかないところもあるでしょうが、身に付けば、これは優れた展開法です。どれだけ展開法の数を知っているかなどに自信を持つよりも、ひとつこの展開法に熟達するほうが、タロットマスターとしては技量を感じるところでお勧めです。赤字で示されました、4スート、四つの聖物による象徴的解釈をするのに、まさしく相応しい展開法であるとも言えるでしょう。そう、ケルト十字展開法は、大アルカナ22枚のみ使用する場合にはちょっと不向きであることが、難点と言えば難点でしょうか。
 

参考資料:ケルトの神話/筑摩書房 井村君江著
Wikipedia, the free encyclopedia「Celtic cross

ケルト十字展開法の色々

ヴィスコンティ版解説書に見られるクラシック系ケルト十字展開法
ヴィスコンティ版ブックレットより

ウェイト博士やメイザースなどオカルティスト系ケルト十字展開法
ウェイト版原書の訳文は会員ページに

現代占術家によりアレンジされたケルト十字展開法
「タロット」A.T.マン/河出書房新社より

2007/03更新

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ウェイト版原書
「THE PICTORIAL KEY TO THE TAROT」
By Arthur Edward Waite
Illustrations By Pamela Colman Smith.
[1911]
和訳バージョン掲載中

参考URL
http://www.sacred-texts.com/tarot/pkt/

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